小説2

 午後の夕陽が差し掛かる頃、クラスメイトの修司君が僕の家に訪れた。彼は封筒を僕に差し出すと、「みんな、待ってるからな」とぶっきらぼうに言って、去ってしまった。彼とは前まで仲が良かったんだ。どうして僕と修司君の間に溝が出来たのか。それは階級の差だ。彼は元々、明るくて社交的だ。勉強もできる。スポーツもできる。僕とは対照的な存在だ。それでも小学生の頃までは良かったんだ。
 最初出会ったのは、小学二年生の時だったな。彼の方から声をかけてくれたんだ。ひとりぼっちだった僕を遊びに誘ってくれた。TVゲームやカードゲームでよく遊んだよ、小学生の頃はね。楽しかったな。彼とあまり遊ばなくなった原因は、異性関係にある。彼はすごくモテるんだ。ルックスもいいしね。

 僕は彼が好きだった、とても。今でもいいヤツには違いないよ。ただ、彼といると惨めな気持ちになるんだ。だから、遊ぶのはやめたよ。彼の方も僕のようなうじうじした暗い奴と付き合うよりかは、彼と同じような女の子にモテる連中とつるむ方が気が楽なんだろうな。そういうことはわかるんだ、僕。
 僕は朝から晩までゲームをする生活を過ごしていた。同じモンスターを何体も倒しているとなんだか切ない気持ちになってくる。こんなことをしたって憂鬱なだけじゃないか。とうとうゲームも嫌いになってしまいそうだ。この頃は嫌いなものばかり増える。嫌になっちゃうよ。ゲームから一旦離れようと思った。

 だからといって、勉強をする気にはなれなかった。将来に希望を持つことは僕にとって難しかった。なにもかもしたくない。
 季節が冬になり塞ぎこむように部屋で過ごした。この頃は独り言も多い。ノートに文字を書き込んでみる。読み返すと誤字脱字だらけだ。
 今年ももう終わろうとしているのに、問題は山積みだ。放ったらかし冬休みの宿題。勉強机は埃まみれだ。ドア越しに母親の声が聞こえてくる。返事を返す気にもなれなかった。ひとりぼっちのこの部屋で僕は夢を見ることもなく眠りこけた。 

 カーテンの隙間から日差しが差し込んで不意に目が覚めた。雨が降りやむと少し気が楽だ。雨は嫌いだと思う。雨が好きな人なんているのだろうかと考える。きっといないだろうな、正直なところさ。 

 いい加減、勉強机の上の埃の山をどうにかしないといけないと感じた。埃を拭くぞうきんも何もないことに、仕方なしに飯時以外開かれることのない扉の鍵を開けた。